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経営の美学-日本企業の新しい型と理を求めて

(編)野中郁次郎 嶋口充輝
価値創造フォーラム21

あとがき

後編

月並みな言葉かもしれませんが、企業経営の基本は人にあります。企業は顧客をはじめ、従業員、地域社会、株主など企業を取り巻く人すべての人びと(ステークホルダース)にとって価値あるものでなくてはなりません。例えば帝人のブランドステートメントである“Human Chemistry, Human Solutions”も、その中心にあるのはHumanです。我が国においてCSRは耳新しい言葉ですが、これは決して新奇なものでも特別なものではなく、企業と企業を取り巻く多くの人びとが深く関係しあって、共存共栄していく理想境を指すのではないでしょうか。

日頃の企業経営においても人が主役です。企業は組織で動いていますから、高い個人能力とあわせて、人のネットワーク、すなわちコミュニケーションに基づくチームワークがきわめて重要です。最近、日本の“ものつくり”を再評価する機運が高まっていますが、コツコツと改良を積み上げて、お互いが連携して行う“ものつくり”は、人を基本とする日本型経営の強味です。組織を動かすにはリーダーシップが必要です。これもまた、別の意味で人の問題です。人を引っ張るには他人を惹きつけるある種のカリスマ性が必要ですが、これがあまり強いと個人の能力を阻害したり、チームワークを破壊する場合もあります。

このように、経営とはあらゆる人びとの調和・バランスの上に成り立っています。人を軸とした経営を実践し、会社の方針、目指すことが従業員や顧客によく周知・理解され、それが株主や社会に歓迎され、相応の収益を上げることができる経営を目指したいと思います。日頃の業務執行において、理想とする経営を追求しながら企業価値を高めることは、まさにこの本の題名である「経営の美学」であると考えます。

10年間「価値創造フォーラム21」を御指導下さいました、福原義春資生堂名誉会長、小林陽太郎富士ゼロックス相談役最高顧問、井関利明慶應義塾大学名誉教授、野中郁次郎一橋大学大学院名誉教授、嶋口充輝法政大学経営大学院教授、さらに初代理事長弦間明資生堂相談役、二代目理事長岩沙弘道三井不動産社長をはじめとする多くの諸先生と経営者の皆様、代表事務幹事としてこのフォーラムの運営を一手に引き受けられ、ここまで引っ張ってくださった早川吉春霞エンパワーメント研究所代表、並びに今回の出版にプロジェクトリーダーとして尽力された元富士ゼロックス副社長髙橋秀明慶應義塾大学大学院教授、またアサツーディ・ケイの佐藤尚樹氏、資生堂の羽柴秀俊氏、帝人の野口泰稔氏、俵則道氏、富士ゼロックスの古瀬裕昭氏、三井不動産の川村豊氏、三井物産の岡本竜馬氏ら10周年記念出版プロジェクトメンバーの皆さん、編集作業の実務を担われた福井信彦氏など多くの皆様のお陰で、この本を出版することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

「価値創造フォーラム21」は、これまでにも増して活発に活動を展開し、価値創造のあり方を探求してまいります。これからも御支援御協力いただきますよう、お願い申し上げます。

価値創造フォーラム21理事長
長島徹

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