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経営の美学−日本企業の新しい型と理を求めて

(編)野中郁次郎 嶋口充輝
価値創造フォーラム21

あとがき

前編

「価値創造フォーラム21」は、新たな価値創造を目指す企業活動のあり方、価値創造のリーダーシップのあり方を探求する場として、1998年4月に設立されました。それから10年、異なる業種、異なる立場の経営者が互いに意見を述べ合い、ときには経済界のトップや、学会等各方面の第一人者の方々から示唆に富むお話を伺いながら、経営のあるべき姿を追究してきました。この本は、その10年間の活動を集大成したものです。

活動を開始した当時は、バブル崩壊の後遺症がもっとも深刻な時期で、日本経済は自信を失っていました。前年には北海道拓殖銀行や山一證券など大手金融機関が破綻に追い込まれ、海外ではアジア通貨危機が発生するなど、国内外で経済が混乱しました。また、近隣諸国の生産力の増大、IT技術の進歩によって、経済のグローバル化は一層進展し、ボーダーレスな競争が激化しました。

そうした時期に、資生堂の福原義春名誉会長をはじめ、現在は特別顧問となっていただいている財界のリーダーの皆様、学会の諸先生が集まり、この時代を乗り切るために日本の経済と社会の再生に意味のある会を設けよう、その会の旗印は新たなる企業価値の創造しかない、という共通の志の下にこのフォーラムはスタートしました。

日本企業の経営力が問われると共に、企業経営のあり方についてもシェアホルダーバリュー志向の大きなうねりのもとで、これまで以上に株主の利益を意識した欧米流の経営手法がグローバルスタンダードであるとしてもてはやされ、その経営手法導入の動きが急速に活発化したのもこの時期です。たしかに世界経済の単一化、ステークホルダースの変化、経営リスクの増大のなかで、一部に曖昧さを残した従来の日本型経営は、透明性、公平性、迅速性、説明責任などに問題があったことは事実でした。

しかし、「価値創造フォーラム21」では、日本企業に備わった長所に注目し、企業価値を社会的価値並びに文化的価値などを含んだ奥行の深いものととらえ、企業理念や企業活動のそれぞれのあり方について活発に議論をしてきました。このような困難な時期から、継続して第一線の経営者が「会社は誰のためのものか」「企業価値とは何か」といった基本的な問題に立ち返って検討を加え、新たな時代に適応した企業経営、価値創造の実践に真剣に取り組み続けてきたことは、大変意義深いことでした。

以下は、10年間に取り組んできた年度ごとの統一テーマです。この一覧からは、時代の要請に応えつつ、普遍的なテーマを追求してきた「価値創造フォーラム21」の基本姿勢が明示されています。

  • 平成10(1998)年度  「価値創造とビジネス・デザイン革新」
  • 平成11(1999)年度  「価値創造とビジネス・デザイン革新 新しいプロフィット・ゾーンを探る」
  • 平成12(2000)年度  「デジタル・ネットワーク時代の価値創造とビジネス・デザイン」
  • 平成13(2001)年度  「価値創造のための創造的破壊とビジネス・リデザイン」
  • 平成14(2002)年度  「価値創造のためのビジネス再創造 リーダーシップ革命とマーケティング革命」
  • 平成15(2003)年度  「価値創造のさらなる進化に向けて」
  • 平成16(2004)年度  「価値創造の原点に立ち戻る」
  • 平成17(2005)年度  「進化する遺伝子と価値創造」
  • 平成18(2006)年度  「相対の競争から絶対の競争へ」
  • 平成19(2007)年度  「価値創造のリーダーシップ」

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