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経営の美学-日本企業の新しい型と理を求めて

(編)野中郁次郎 嶋口充輝
価値創造フォーラム21

まえがき-新たなる経営の美学を求めて

1、変革の時代

現代社会の経済的豊かさは優れた企業の存在によって支えられている。それゆえに企業は何にもまして、経済をリードする経済主体といえるが、近年はその企業経営に大きな転換が求められている。たとえば、現代企業のさまざまな活動は、経済的豊かさを提供する一方、格差社会、地球環境破壊、エネルギー危機、社会的不祥事、道徳的・文化的な精神基盤の崩壊など、数々の社会構造的問題を生み出している。
このような時、経済至上主義的な企業活動によって人間は本当に幸せになりうるのか、という根源的な疑問や問いかけが生まれてくる。改めて「企業とは一体何か」「企業経営はいかにあるべきか」に真剣に答える必要が求められてくる。実際、今日は多くの優れた経営者によって、企業の価値は、財務諸表上に示される企業規模や利益の大きさといった量的基準もさることながら、より根源的な質的側面から見直されるべき、と認識されつつある。それは、量を追求する経済至上主義のなかに質的な要素を組み込むという改善型変更というより、むしろ質的な企業価値追求のなかに、結果としての量的経済成果を求めていこうとするパラダイム・チェンジとなる。

われわれは、1981年にQMフォーラムを設立し、一貫して企業価値とは何かを追求し、経営の質(クオリティ)の向上を目指してきた。このクオリティ・マネジメントの探求を源流とし、その後98年設立の価値創造フォーラム21の活動に引き継がれ、四半世紀にわたる企業価値研究として今日に至っている。当フォーラムでは、企業がグローバルな価値創造企業となるために、従来型の物的経営資源の枠組みに固執するのではなく、経営を支える土壌となっている理念や企業文化といった無形の資源を含めて経営を考えることが重要であることを提唱し続けてきた。また、価値の原点は、企業ではなく社会や顧客にあり、その緊密な関係のなかで価値を共創していくことが企業の役割として意識されねばならないことが強く認識されてきたのである。まさに、新たな経営の美学が求められたのである。

2.企業の価値へ