(編)伊藤邦雄 石井淳蔵
価値創造フォーラム21
一般社団法人 価値創造フォーラム21
理事長 伊東信一郎
「企業の価値」が注目される今、新たなる価値創造を目指す企業活動のあり方が問われています。「価値創造フォーラム21」は、個と組織の共進化や共創を目指す新しい価値創造のリーダーシップのあり方などを探求する場として、業種を超え、志を一つにする経営者が集まり、一九九八年四月に設立され、二〇〇九年一〇月に一般社団法人化しました。
当フォーラムの諸活動において、私達は常に、企業の価値を単なる経済的価値だけでなく、社会的価値、文化的価値等をも包含した、奥行きの深いものと捉えてきました。そして、価値を創造し続ける企業では、数値化できない優れた企業風土や文化、遺伝子が脈々と受け継がれていることや、その企業にしかできない絶対価値の創造と深化が永続的発展に不可欠であることなどを学んできました。
こうした優れた企業風土や文化、遺伝子に加え、企業価値探求の姿勢や共生と共創の精神などを世代を超えて組織的に継承するために、リーマン・ショック直後の二〇〇八年の一一月に、日本経済新聞社後援のもと第一期「価値創造リーダー育成塾」を立ち上げ、さらに一一年一二月には第二期「価値創造リーダー育成塾」を開講しました。こうした活動に参加されてきたメンバーの多くが、厳しい時代に立ち向かう「価値創造リーダー」として、現在、各企業の第一線で活躍されています。この育成塾の活動を通して、次世代の価値創造リーダーを育成するだけでなく、こうした人材の横断的なつながりを強化するためのプラットフォームの構築等を目指しています。
フォーラム一六年目となる本年度の統一テーマは「危機を超える真の企業競争力」です。日本経済はバブル崩壊以降、いわゆる「失われた二〇年」と言われる長いトンネルに入り、リーマン・ショックと、その回復の兆しの中で発生した東日本大震災と電力問題、歴史的な円高や原油・資源価格の高騰等、長い間、非常に厳しい環境に置かれ、生産拠点としての日本の競争力は極めて厳しい状況に直面してきました。
「アベノミクス」の効果により復活の兆しも見えつつありますが、激しさを増すグローバルな競争や、少子高齢化で縮小傾向が続く国内市場の中で、生き残りをかけて多くの企業がアジアをはじめ海外へ進出し、製造の移転を加速させています。まさに私達は大きな転換期を迎えています。
こうした環境において、企業が危機を超える真の競争力を身につけるためには、普遍的な理念や大義を基礎に据えた上で、視野を広げ、時代や顧客の変化に敏感に、かつ過去の延長線上でない独創性や革新性、チャレンジ精神にこだわりながら、時代に応じて自らを進化させるとともに、自分たちにしか創造し得ない絶対価値を追求していくこと以外に方策はありません。
このような考えのもと、「価値創造フォーラム21」では、新しい時代に向けたフォーラム活動の進化や情報発信を通じ、産学における様々な価値創造のプロセスやシステムのさらなる進化を促し、持続的な日本経済と社会の発展に一層、寄与していきたいと考えています。
二〇一三年八月