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経営の美徳-次世代リーダー育成塾

(編)野中郁次郎  米倉誠一郎
価値創造フォーラム21

まえがき

本書は一九九八年四月に発足し、昨年(二〇一八年)に設立二〇周年を迎えた経済界トップと経営学者等による経営研究の場である、一般社団法人「価値創造フォーラム21」が日本経済新聞社と共催した第三期「価値創造リーダー育成塾」の成果物である。

世界の政治・外交・経済の密接度が一層高まり、日本企業を取り巻く環境は日々目まぐるしく変化している。激動の平成というひとつの時代が幕を閉じ、予測不能かつ不確実性の高い新たな時代が幕を開ける時、日本そして世界の明るい未来を創り出していくため、物事の本質を見失わずに持続的な成長を実現していくため、これまで以上に「絶対の競争」を通した価値創造に挑む力強いリーダーの育成が急務であることは言うを俟たない。

本書の概略に触れる前に、まず「価値創造フォーラム21」(以下、当フォーラム)について簡潔に紹介しておきたい。当フォーラムは「絶対的な価値創造を通して、二一世紀に向けて明るい希望に満ちた日本を再生しよう」という高い〝志〟を持ったメンバーによって立ち上げられ、現在に至っている。設立以来、異なる業種、異なる立場の経営トップ、経営学者、将来の経営を担う人材が集い、「企業価値とは社会的価値、文化的価値などを含んだ奥行きの深いもの」という理念の下で、議論を重ね、お互いが刺激を受けながら企業価値の向上の探求を続けてきた。

とりわけ、不安定な世の中にあっても、企業として顧客や時代が求める多様なニーズを追求し、グローバルに、より競争力ある、より価値ある製品やサービスを世に送り出し、社会の発展に貢献していく、という企業の使命や理念、価値観を受け継ぐ「次世代リーダー」の育成を目的に、第三期「価値創造リーダー育成塾」を開講した。なお、リーマンショック発生直後の二〇〇八年一一月には第一期、東日本大震災発生後の二〇一一年一二月に第二期を開講し、それぞれの成果物として日本経済新聞出版社から『経営の流儀』『経営の作法』を刊行している。

私自身、当フォーラムの活動に一〇年近く携わりながら、人的ネットワーキングと知的刺激を得て、自分自身が研鑽されていくことを実感してきている。世の中には当フォーラム同様の集いがいくつも存在するとは思うが、講演会等が終了した後に開かれる懇親会の会場で、多くの参加者が会場退出を促されるまで熱心に企業経営を語らい続ける光景が印象的であり、当フォーラムの質的優位性を物語る場面であると感じている。

近年、企業経営に対する注目度が高まっており、コーポレートガバナンス改革の一環として「コーポレートガバナンス・コード」への対応、投資家・株主との対話の促進など、持続的な成長につながる事業運営と健全な経営体制の構築の両立を実現することが求められており、私自身も経営者の端くれとして、日々課題に向き合っているところである。

本書は、第一線で活躍する経営トップや経営学者の経験・知見、研究・論考を通じて導き出された、それぞれの、「美徳」とも言える経営哲学・スタイルが収戴されており、次世代リーダーを担う読者はもとより、すでに経営トップとして活躍する読者にも必ずや何らかの知的刺激やヒントを与え有益なインプットになるものと確信している。

最後に、本書刊行にあたり、当フォーラムの歴代の会長、理事長、顧問、アドバイザー、活動を支える理事、監事、幹事の皆様、第三期「価値創造リーダー育成塾」の共催者として当フォーラムの活動を全面的に支援していただいた日本経済新聞社、さらに、ご登壇いただいた講師の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げたい。

二〇一九年春

片野坂真哉

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